初めて敷地を訪れたときの印象は、海に面した崖。
大きな岩や鬱蒼と繁る木々、そして海へと続く古い階段が印象的だった。

わずかに平らな場所が上下に二ヶ所あり、この限られた地形をそのまま活かして二棟を計画した。
地形を大きく変えず、もともとの起伏を地盤として利用し、風景を守りながらコストを抑える設計としている。
敷地内の岩は外へ持ち出さず再配置し、既存の外階段も生かした。

約2メートル張り出した庇が二棟を緩やかにつなぎ、
各所で異なる海の表情を切り取る。
風景を壊さず、まるで以前からそこにあったかのような佇まいを目指した。

上段にはリビングを中心としたパブリックスペース、
下段にはプライベートとゲストの空間をまとめ、
ブリッジとバルコニーでゆるやかにつないでいる。

玄関を開けると、正面にはリビング越しに海が広がり、
二方向の開口からは時間とともに移ろう光と海を感じられる。
登り梁の先まで連なる深い軒が空間に奥行きを与え、
床材を内外で統一することで一体的な広がりを生んでいる。

どの部屋からも海を望むことができ、
その表情は場所ごとに異なる。
移ろう海を日々のアートとして楽しめるようにした。

施主は海が大好きで、この土地を見つけるまでに2年をかけたという。
自然とともに暮らすためのかたちを探り、
海と地形と人の関係を静かに映す家を目指した。

家づくりのヒント

テーマ『高低差』

起伏のある土地は設計に大きな制約になりますが、それを生かすことで、部屋ごとに異なる海の眺望や、空間用途が違う二棟の建物をつなぐという、この敷地だからこその住宅ができた。

住宅情報

建築年 2025年
敷地面積 1628.57㎡
延床面積 176.82㎡

建築家について

建築家近影
氏名 石川 英樹
所属 株式会社石川英樹建築設計事務所
所在地 愛知県名古屋市千種区新池町2-8-309
ホームページ https://hidekiishikawa.com